最高裁判所第二小法廷 昭和35年(オ)71号 判決 1961年3月24日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人重田光明の上告理由一ないし四について。
原判決は、本件土地については罹災都市借地借家臨時処理法二条により設定せられた賃借権の存するところ、右賃借権の存続期限である昭和三二年一〇月一日以後も被上告人は右土地の使用を継続しており、上告人のなした異議は借地法六条二項に準用される同法四条一項但書の正当事由があつたものと認められないから、右異議はその効力を生じない旨判示したものあつて、右判断は正当としてこれを是認することができる。けだし、罹災都市借地借家臨時処理法は、第二条において戦災のため住居を失つた借家人に対し優先的にその敷地を賃借する権利を与えると共に、第五条においてかくして設定せられた賃借権に少なくとも一〇年の存続期間を保障することによつてその地位を安定させ、同法の他の諸条と相待つて、建物築造を促がし戦災地の復興に協力させることを目的としたものであるから、これに応じて敷地賃借を申し出、建物を築造所有し、よつて右期間満了後も土地の使用を継続する場合には借地法六条が適用せられて、いわゆる法定更新が行われるものと解するのを相当とするからである。所論はこれに反する見解を前提とするもので採用しがたく、原判決に所論の違法はない。
同五について。
原判決は、上告人の本件土地に関する地上建物収去土地明渡の請求を排斥する理由として、被上告人が本件土地につき所論賃借権を有することを認定判示したに過ぎないから、その価額を明らかにしなかつたからといつて原判決に所論の違法はない。
同六について。
所論は、原審が適法になした事実の認定を非難するもので、上告適法の理由とならない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)